HPVワクチン被害の究明が先

厚生労働省の専門部会は、HPVワクチン(子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルスの感染を防ぐワクチン)について、積極的な接種呼びかけを再開する方向で意見が一致したと報道がありました。専門部会では、
▽国内外の調査によって、HPVワクチン接種後に生じた症状とワクチンとの関連性が明らかになっていない
▽海外の大規模調査でワクチン接種による子宮頸がんの予防効果が確認されている
▽近年はHPVワクチンの接種数が増加している一方、副反応疑い報告の割合は横ばいである
などが報告され、再開を妨げる要素はないとしていますが、HPVワクチン被害者による薬害訴訟は未だ決着していません。

HPVワクチンは、2009年に承認され、2013年4月に小学6年~高校1年の女子は無料で接種を受けられる「定期接種」の対象となりました。しかし、全国でワクチン接種後の副反応が相次いで報告されたため、6月には定期接種の位置づけは維持しながら、対象者に個別に接種を呼びかける積極的勧奨を中止しました。

ワクチン被害者は、2013年3月に「全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会」を結成し、2016年には、東京・名古屋・大阪・福岡の地裁に一斉提訴し、ずっと争っています。全身の痛み(痛みがぐるぐる体中をめぐる)、運動障害(まっすぐ歩けない)、記憶障害(友だちの顔がわからない)等の深刻な副作用に多くの被害者が今も苦しんでいます。
被害者の願いは、「将来にわたって医療や生活全般にわたって安心して生きていけるようにすること、また、真相を明らかにして被害をくりかえさないようにすること」。弁護団も「訴訟により国と企業の法的責任を明確にし、それを基盤に真の救済と再発防止を実現する」としています。

厚労省は、まだ積極的勧奨を控えている2020年10月に、各自治体に向けて「接種対象者にお知らせを出すように」という不可解な通達を出しました。自治体の対応は様々でしたが、2020年に接種者が一気に増えてきている実態があります。鎌倉市でも2018年25人、2019年54人、2020年330人です。その数字が専門部会に反映しているようです。子どもたちの健康にかかわる問題です。突然被害者になってしまった子どもとご家族の救済は未だ全く不十分で、医療体制も確立せず、被害の真相は明らかになっていません。HPVワクチン被害の究明なくして接種再開には賛成できません。(M・M)

 

以下は、2013年当時、鎌倉市が被害状況を調査した結果を考察した一部です。
任意接種の段階で被害者が2人報告され、全国で初めて、接種した全員を対象に体調変化の実態調査を実施しました。対象者3060人中、1795人から回答が寄せられ、818人が接種後に痛みや腫れ、だるさ、頭痛、生理不順等の体調変化があり、11人は今も症状が継続しています。全3回接種ですが、回数を重ねるたびに体調変化の割合が高くなっていることもわかりました。