国の5省庁が「その香り 困っている人がいるかも?」ポスター作成
強い香りを発する洗剤や柔軟仕上げ剤・芳香剤・消臭スプレーなどの人工香料によって健康被害を引き起こす「香害」。
国の5省庁(消費者庁、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、環境省)は、香害に関するポスターを今年8月に連名で作成し発行しました。
香り製品により頭痛や吐き気・呼吸困難などの体調不良を引き起こす人がいることを認めたことは一歩前進です。消費者庁は、全国の消費生活センター等(約1150箇所)に3部ずつ、さらに各都道府県・政令指定都市の消費者行政担当課に5部ずつ配布しているとのことです。文科省も、都道府県と政令指定都市の教育委員会に電子版で配布したそうです。しかし、鎌倉市のポスター掲示は進んでいませんが、未だ届いていないのでしょうか?
これまで、日本消費者連盟や市民団体の活動と並行し、神奈川ネットも香害対策に取組んできました。
●7年ほど前に香料による被害相談が寄せられ、2015年には神奈川県の状況を調査後、独自に啓発ポスターを作成して公共施設はじめ連携団体の施設等への掲示を進めてきました。
●2018年には、「香害」についての実態を知るためにアンケート調査を行いました。対面の聞取り調査に加え、ホームページ上からも回答できるようにしたところ、連日全国から困っている、つらいという切実な声が寄せられ、大きな反響は私たちの活動に弾みをつけました。
●同年、市民ネットワーク北海道はじめ市民団体と連携して、以下を求める署名を行いました。
1.「香害」で苦しむ人がいることを周知徹底し、ポスターなどで香料自粛に向けた啓発をしてください。
2.柔軟仕上げ剤、消臭除菌スプレーを「家庭用品品質表示法」の指定品目としてください。
3.香料の成分表示を義務付けてください。
4.国民生活センターに被害の実状に合わせた専用窓口を設置するとともに、「香害」の相談窓口を各都道府県に設置してください。
30,057筆の署名とともに、神奈川ネットのアンケート調査の結果も示し、文科省・厚労省・経産省・内閣府(消費者及び食品安全担当)と意見交換を行い問題提起しましたが、「香害に対する知見がない」「化学的な検証による因果関係が明らかになっていない」との回答に終始しました。しかしここで、全国の消費生活センターには、匂いについて5年間で838件の相談があることや、学校では、実際に教室に入れず困っている子どもがいて個別に対応しているケースがあることがわかりました。
●この頃すでに、全国では今回のような啓発ポスターを作成している先進自治体があり、神奈川ネットも化学物質対策とともにポスター作成を県内各議会で提案し、実現したところもありますが、温度差がありました。その後、全国的にポスターを作成した自治体が増えてきたことから、香りによる体調不良が広がっていることがうかがえます。
●この夏、国がポスターを作ったことによって「香害」で苦しむ人に対する理解が進むことに期待します。誰もが他人ごとではなく自分のこととして受け止めてほしいと思います。
最後に、香りを長持ちさせるために使われるマイクロカプセルには、毒性が強い化学物質「イソシアネート」が使われ、一般の化学物質に比べ、空気中のごく薄い濃度でも呼吸器と中枢神経に炎症を引き起こすと言われています。日本では規制がなくあらゆるものに使われているのに表示もされていません。特に子どもたちは、いい匂いの人工香料とマイクロカプセル片が充満している中で過ごし、いつ健康被害を引き起こすかわかりません。せっけん運動が発端となり、1984年に正式に誕生した神奈川ネットワーク運動は、これからも予防原則に従い、有害な合成化学物質の使用規制に向けて取り組んでいきます。(M・M)