「家庭教育支援法」は誰のため?
1月下旬以降、県内の多くの議会に、家庭教育を推進すると標榜する団体名で、「家庭教育支援法の制定を求める意見書提出に関する陳情」が提出されています。
教育基本法に「家庭教育」に関する条文が新設されたのは、第一次安倍政権下の 2006 年。安倍首相が会長を務める「家庭教育支援議員連盟」が 2012 年に発足し、以後法制化の機会をうかがってきました。自民党は、今国会へ家庭教育支援法案の提出を目ざしていますが、支援と銘打っていても、子どもの虐待防止や貧困解消をはかるものではありません。素案からの変更点の詳細は明らかではありませんが、現時点で法案は全15 条からなり、「家庭教育は、父母・保護者の責任で子供に生活に必要な習慣を身につけさせ、自立心の育成に努める」「学校や保育所、住民は、国や自治体の家庭教育支援策に協力するよう努める」といったことを定めています。
これは、家庭において、子どもを国や郷土を愛し、国のために役立つ人材に育てるための支援を行おうとする法案で、あるべき家族観を押し付けているのは明らかです。家庭にはそれぞれの事情がありスタイルがあり、国が法律で家族のあり様を規定することは、多様な生き方を否定することにつながります。
鎌倉市議会でも、意見書提出議案の議員提案を準備する動きがありました。しかし、女性議員を中心に、多くの議員が「家族のあり方や女性の生き方が多様化している現状を踏まえていない」「型にはめた家族像を前提としている」等、法案の問題点を指摘したことで、提案はされずに済みました。
今回の県内議会への陳情活動を知った市民や市民団体からも「家庭を縛るものではないか」「地域も巻き込み、国が描く家族観に子どもを追い込むのではないか」と心配な声も寄せられました。神奈川ネットは、家庭においても個人を尊重し、子どもがのびやかに豊かに育つ環境整備を重視して「子ども・子育て支援」の充実に取り組んでいきます。