放課後かまくらっ子での自衛隊体験プログラムの実施は不適切~市長宛要望書を提出

放課後かまくらっ子(学童保育と全児童対象の放課後事業を一体的に実施)では、地域団体等に協力していただいて多様な体験活動(プログラム)を週1回程度実施しています。
6月議会が始まって間もなく、その「プログラム」で、自衛隊員の指導による整列・敬礼訓練やロープワーク体験などの「自衛隊体験プログラム」が実施されていたことが明らかになりました。5月29日に「かまくらっ子・おなり(御成)」で実施されたもので、参加児童の親御さんからの問題提起で発覚しました。
さらに、同様のプログラムが、昨年5月には7か所のかまくらっ子の合同で「自衛隊親子体験教室」として開催されていたこともわかりました。

2023年5月実施のプログラムのチラシ

教育福祉常任委員会で説明を求め、その後市長に「要望書」
6月12日の教育福祉常任委員会では、井上三華子議員が所管の青少年課から説明を求めましたが、他の4人の委員は委員会で問題にしたこと自体を否定的に捉え、適切なプログラムだったということの確認を所管課に求めました。

ネット鎌倉は、これは看過できない事態であると考え、7月1日に下記の要望書を市長、こどもみらい部長に提出し、翌2日に松尾市長と面談して要望内容を伝えて理解を求めました。
以下、要望の内容(全文)と要望の理由(長文のため、一部抜粋)を記します。

 

放課後かまくらっ子で不適切なプログラムが実施されたことにかかる要望 2024.7.1

要望内容
1.自衛隊は防衛を主たる任務とする組織であり、国際法上は軍隊です。整列・点呼・敬礼などは軍事教練に通じるものです。自衛隊体験プログラムが、他の一般の職業に従事している人との交流を通してその職業について学ぶ体験とは全く異質であることは明白です。
昨年5月および本年5月に放課後かまくらっ子のプログラムとして「自衛隊体験」を実施したのは不適切であったという認識をしっかりと持ち、自衛隊員およびその関係者を講師に招いた同様のプログラムが今後実施されることがないようにしてください。

2. 放課後かまくらっ子のプログラムは、指定管理者が企画・実施しますが、指定管理業務仕様書に記載された「地域団体等の協力を得た活動体験等のプログラム」という趣旨から逸脱することがないように、市として実施状況の把握に努め、指定管理者との連携を適切に行ってください。
指定管理者が地域の人材から採用する推進員やサポーターからのアイデアや、利用児童の家庭からの要望をプログラムの組み立てに反映するのは良いことですが、かまくらっ子のプログラムに相応しい内容かどうかの判断は、指定管理者任せにしないでください。

 

要望の理由(抜粋)
要望内容1について
1)
災害時の人命救助や災害復旧の一番過酷な場面で活躍してくれる自衛隊の姿は大変頼もしいですが、自衛隊法83条に基づく災害派遣での貢献にだけ注目するのは、きわめて一面的な見方です。自衛隊の主たる任務は「我が国を防衛すること」(自衛隊法3条)であり、自衛隊員は「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に努め」る服務の本旨(同52条)について、「服務の宣誓」(同53条)をしています。

国際法上は軍隊にほかならない自衛隊の隊員の服務を、他の「さまざまな仕事」と同様に位置付けて、自衛隊体験プログラムを「さまざまな仕事への理解を深める」一環だと捉えるのは、明らかに失当です。

2)子どもたちが、現職隊員と直に接し、その整然とした所作や高い身体能力、あるいはホンモノの制服や装備を目にし、また自らも整列や敬礼などを模倣することで、自衛隊への敬意、あこがれ、感謝などの気持ちが醸成されることが考えられます。自衛隊員になることが何を意味するのか十分に理解できない年齢の子ども達に、ある種の刷り込みを行うことは慎むべきです。

子どもの権利条約ネットワーク代表の喜多明人・早大名誉教授は、子どもを対象にした自衛隊のPR活動について、「アニメやゲームの世界の戦争と、現実は違うという認識を持つ前の段階の子どもを、自衛隊が引き込もうとすることに危うさを感じる」と指摘されています。

3)子どもたちの防災意識を高める意図であれば、鎌倉消防や、防災士会・防災士ネット、「火災予防のONE LOVE」などにお願いすればよいのであって、自衛隊である必要はありませんでした。地域の団体に協力していただければよいことです。

4)自衛隊体験プログラムで、子どもたちが整列・点呼・敬礼などを「体験」したことについて、市議会の教育福祉常任委員会では「挨拶の練習のどこがいけないのか。挨拶は大事だ」という趣旨の委員発言がありましたが、自衛隊における整列・点呼・敬礼などは規律を体現するものであって、一般的な挨拶とは意味が違います。
戦時中の国民学校における軍事教練を想起させるような「体験」を放課後かまくらっ子のプログラムとして行ったのは、どう考えても不適切です。


要望内容2について
1)
放課後かまくらっ子の指定管理者仕様書には、「コーディネーター等を配置し、週に1回程度、地域団体等の協力を得た活動体験等のプログラムを開催すること」とあり、「造形活動、身体を使う活動、理科活動、昔遊び等のその他体験活動 」などが列挙されています。その中で、かまくらっ子発足以来特に心掛けられているのは、地域の人材の協力を得た活動体験です。子どもたちの放課後の居場所という性格からして、学習的な要素を前面に出していないことも考え合わせ、プログラムの元々の趣旨から外れることがないようにするべきです。

2)放課後かまくらっ子で指定管理者制度が全面的に導入される中で、ネットは、事業の実施を指定管理者任せにせず、市が適切な関与することを求めてきました。かまくらっ子のプログラムについては、常日頃プログラムの「考え方」を指定管理者と共有化するとともに、実施の報告に基づく指導を適切におこなってください。