「香害」と有害化学物質「イソシアネート」の被害

強い香りを発する洗剤や柔軟仕上げ剤・芳香剤・消臭スプレーなどの利用が増え、人工香料が、頭痛や吐き気・かゆみの誘発や鼻炎の悪化などを引き起こしています。さらに、香りを長持ちさせるために使われるマイクロカプセルには、毒性が強い化学物質「イソシアネート」が含まれ、健康への影響が懸念されています。
香害・化学物質対策PJでは、小児科医の角田和彦先生を講師に迎え、「イソシアネートの影響を知る」~子どもの免疫を脅かす有害化学物質イソシアネート~の学習会を行いました。全国から参加があり、深刻な問題である確証を持ちました。

香りが広がるしくみ
香りを閉じ込めるマイクルカプセルの壁材はウレタン製が多く、目的ごとに多種類のイソシアネートが使われています。柔軟仕上げ剤付属のキャップ1杯に約1億個のマイクロカプセルがあり、8割以上は下水に流れますが、残ったものは衣類の乾燥とともに周囲に飛散します。乾燥後は衣類に固着し、着用して衣類をはたくと、香料を包んだマイクロカプセルが破裂して芳香成分をまき散らすと同時にカプセルに含まれるイソシアネートも揮発・浮遊します。さらに破れたカプセルは長く繊維に固着し、香りがなくなっても有害物質は残ります。

環境に広がるイソシアネート
イソシアネートは身の回りの様々なものに使われています。屋外では、舗装道路・塗料や防水加工・農薬や肥料・車のタイヤなど、屋内では、クッション・マットレス・合板・家具・殺虫材や消臭剤などです。もっと危険なことには、肌に身に着けるポリウレタン素材の伸びる衣類・形状記憶や防水加工の繊維製品・マスクの耳掛け部分にも使われ、劣化の過程でイソシアネートが揮発し、母親の服装が子どもの喘息を悪化させた事例もあるそうです。生活環境中のイソシアネート濃度が職場環境平均許容濃度を超えはじめているとのこと。特に室内は要注意。

香料とイソシアネートの健康被害
香料の中には、アレルギーや喘息を発症・悪化させる物質、発がん性の物質があることが分かってきました。加えて、破裂してばらばらになった極小のマイクロカプセル片は、体の組織に入り込み体内に蓄積されて、皮膚・粘膜障害、呼吸器障害、神経障害、発がんを引き起こします。ダブルで体にダメージを与えます。
角田先生は、広範にわたり化学物質の危険性を説かれ、環境中の化学物質汚染は、胎児期から神経・内分泌・免疫に影響すると指摘されました

イソシアネートの規制を
一般の化学物質に比べ、空気中のごく薄い濃度でも呼吸器と中枢神経に炎症を引き起こすイソシアネート。毒性が強く、国際基準の「安全データシート」で「どくろマーク」をつける化学薬品ですが、日本では規制がなく表示もされず、企業の思うままです。
子どもたちは合成洗剤や柔軟仕上げ剤の様々な香りを身にまとい、学校や幼稚園・保育園で香料とマイクロカプセル片が充満している中で過ごしています。アレルギーを起こすことができる子どもは、健康を害する化学物質を遠ざけ体内侵入を阻止します。しかし、そうではない子どもは、知らず知らず化学物質を暴露し続け、その結果が出るのはずっと先です。子どもの健康と命を守るのは大人の責任です。文部科学省が定める「学校環境衛生基準」に示されている揮発性有機化合物6物質への追加指定が急がれます。
神奈川ネットは、まず「香害」と「イソシアネート被害」について広く知らせ、自治体や教育委員会が独自の判断で強い香りの自粛に取り組むよう働きかけていきます。(三宅真里)

アレルギー反応とは:角田先生は、アレルギー反応は、哺乳動物が進化の末に獲得した高度な免疫、つまり微量の毒物を含む物質を認識し、体内への侵入を阻止する防衛手段だと説明されました。アレルギーを起こすことができる子どもは、健康を害する化学物質の体内侵入を阻止し、体の健康な状態を維持していくことができる。アトピー性皮膚炎は、入ってしまった化学物質を皮脂腺から排泄し体をきれいにして健康を維持しようとして生じるということです。不適切な環境に敏感なアレルギー児たちは、哺乳動物の群れが生存できる方向に引っ張るセンサーの役割。